情報の価値

情報の価値

新型コロナウイルスが世界の産業に破壊的な影響をもたらしていますが、ボクは相変わらずワークフロムホームと自主的ロックダウン生活を続けています。

今のように世の中が混乱している時や災害時には、身を守るために正しい情報を得ることが重要なのは言うまでもありませんが、注目を集めるために報道合戦しているようなメディアからの情報を鵜呑みにしたり、SNSで拡散される「デマ」や「フェイクニュース」に接していると、不安を煽られるだけで百害あって一利なしだと周りを見ていると本当に実感しますね。ボクは何年も前から「情報ダイエット」を実践し、多くの情報を入れないようにしているので、情報に翻弄されたり必要以上に不安にならずに日常を過ごせています。

情報というのは砂糖のようなもので、大量に摂取することでわかった気になって満足感を得られる上に、中毒性も高くやめるのはなかなか難しいので、質の高い情報を限りある時間の中でどのようにして摂取するかがとても重要です。

ということで今回は情報の価値についてボクが考えていることや実践していることを紹介します。



#1.一次情報の価値

これまでのデジタルデバイドは、情報デバイスを使って得られる情報やサービス、収入などの格差を表していましたが、誰もがスマートフォンを使うようになった今の時代は、実際に自分の目で確かめて、自らの感覚で生の情報を得てきた人と、メディアや表層的なインターネットの情報を手に入れただけでわかった気になっている人との間に生まれている、埋めようのない格差を表していると思います。インターネットや本を読んで得た情報を溜め込んだだけで賢くなった気になっても、実際に自力で思考して行動しなければ身に付きません。インプットしなければいけないのは流れてくる情報ではなく、自分の経験からくる知識です。

Googleマップのストリートビューで世界各国の都市を歩き回ったところで、そこに建つ建築物の存在感を感じることはできないし、そこに集まってくる人々を見ることも、住む人々と話すこともできません。スポーツや音楽などのライブイベントをVRで見たところで、圧倒的なパフォーマンスや観客の熱気を体験することはできません。料理にしても写真や動画を見て説明を聞いたところで、匂いや味、食感など、実際に食べてみなければ結局わからないことばかりです。直接自分の目で見て肌で感じてこそ、生きた情報を獲得することができます。あらゆる情報がデジタル化されてオープンになってきている時代だからこそ、インターネットでアクセスできないとか、シェアできないような一次情報の価値が高まっていると感じています。

新型コロナウイルスによるパンデミックの影響により、当面は人々が動けない時代になってしまいましたが、これを機に仕事もプライベートも今まで以上にいつどこで誰と時間を共有するかというリアルに会うことの価値や、実際にその場所に行って体験することの価値がますます高まっていくと思いますね。



#2.大勢と違う情報を得る価値

話題のニュース

毎日テレビやウェブメディア、ニュースアプリから様々な情報を摂取している人はたくさんいると思いますが、ボクは世の中の大勢と同じ情報を摂取し続けることは、もはや毒なのではないかと思っています。次から次へと目的も無く受動的に情報を摂取することで、それなりに満足感は得られるかもしれませんが、それが果たして何かの役に立っているのか疑問です。当たり前ですが、芸能人が不倫しようが、薬物で捕まろうが自分の人生には全く関係ありません。無料と引き換えに多くの時間と関心を搾取されてしまっています。

情報が溢れる今の時代、情報収集はプッシュ型ではなくプル型です。自らフィルターをかけて不要な情報はどんどん遮断し、取捨選択やエディットして必要な情報を引っ張る時代です。競い合うようにニュースをチェックして情報収集したり、何となく周りが知っているから自分も知らないと不安になって大勢と同じ情報を得るよりも、今の自分にとって必要な情報やもっと興味を持ったことをどんどん探求していく方が、大勢とは違った知識を得ることができて希少価値は高まります。

ボクは気になるニュースや興味を持ったことを調べたりする時には、どんなことでもまずは必ず自分の頭で考えるように心がけています。その答えが合っていても間違っていても気にせずに、あくまで自分なりに仮説を立ててみるというプロセスを大事にしています。今の時代は検索すれば何でも調べられるので、どんどん自分の頭を使わなくなってしまうので注意していますね。


ベストセラー本

本もニュースと同様に、ベストセラーだからといって自分にとって有益で価値が高いわけではありません。話題のビジネス書や海外のベストセラーの翻訳本など、売れているから読んでおいた方がいいんじゃないかと買ったところで、興味が無ければ内容なんて頭に入ってこないし、おまけにすぐに眠くなってきて全く身にならないので、貴重なお金と時間が無駄になるだけです。

最近は、キャッチーな表紙で誰にでも読みやすいようにハードルを下げて書かれたような本がベストセラーになっていたりしますが、その手の本は薄っぺらい内容のものがばかりで新しく得られるものもないので一切読まないようにしています。そういった流行には流されずに、今の自分にとって必要な知識や興味について書かれている本を読む方が、ずっと身になるし価値が高いと思います。

Amazonなどのレビューも同様で、評価が高いから良い本でわけではありません。その評価をしている人がどういう人で、今までどんな本を読んできたかによってその本に対しての評価は変わりますからね。これまで何度もハズレ本を引いてきましたが、その甲斐あって他人の評価に惑わされずに本を選べるようになったと思いますね。



#3.情報の時間価値

動画はテキストや音声に比べて圧倒的な情報量がありますが、視聴するのに目が離せなくなって時間も取られます。でもニュースや講演会のような情報を伝えるための動画であれば、音声だけなら聴きながら他のことができるし、さらに文字起こししたもの読めば必要なことだけをサッと効率良く摂取することができます。ネットの回線がますます高速になり、音声や動画コンテンツがどんどん増えていますが、やはり情報の時間価値ならテキストコンテンツが圧倒的に高いと思います。

ただ、テキストコンテンツがいくら情報摂取に優れているとは言え、情報量があるから価値が高いというわけではありません。情報は送り手が時間をかけて整理することで、受け手が時間をかけずに摂取できるようになるので、むしろ少ない文字数で必要な情報がコンパクトにまとめられているほど、読む方にとっての時間価値は高くなります。食事だって量が多ければ良いというわけではなく、美味しくて体に良いものを適量食べたいですよね。情報量と得られる価値は比例しません。

ところがビジネス書などの実用書で価格も2,000円位になると、薄っぺらい本よりもぶ厚い本の方が文字数がぎっしりで、何となくたくさん有益なことが書いてあって価値が高いような気がしてしまいますよね。でも実際は読むのに何時間もかかってしまうし、中にはダラダラと冗長な文章で無理矢理ページ数を増やすことで、本の体裁を保っているものまである始末です。何となく本を読むことは良いことのようなイメージがありますが、情報の時間価値を考えると必ずしもそうとは限りません。同様にネットでもダラダラと長い文章にしたり、PVを稼ぐために細かくページ分割しているメディアがあるので、こういう読む方の時間を浪費させるような不快なテキストコンテンツには注意していますね。



#4.情報を厳選する価値

Twitter

INSTは自分自身のための覚え書きのようなシンプルな個人メディアですが、作ろうと思ったのはTwitterを使い始めたことがきっかけでした。Twitterを使って日々おもしろいと思ったことや気になったモノなどをキュレーションして発信するうちに、モノも情報も溢れる今の時代に個人が厳選した情報を簡潔に伝えることが高い価値になると感じたからです。サイト名は、無駄を削ぎ落とした必要最低限の情報だけを伝えたいというコンセプトから、ボーカルの無い楽曲を指すインストルメンタルにちなんで名付けました。

Twitterは使える文字数に140文字という制限があるため、送り手は伝えたいことを短い文章にまとめる必要がありますが、そのおかげで受け手はパッと見て興味がある情報かどうかを判断することができます。ニュースサイトで記事のタイトルだけを見て、ピンと来ないものは読み飛ばすのと同じですね。より詳しい情報を得たければリンク先に飛べばいいし、もっと深く知りたければ検索することもできます。ボクはネットニュースは本当に文章がムダに長いものが多いとずっと思っていたので、少ない文字数はむしろメリットに感じました。


LUXE City Guides

INSTを作る上で影響を受けた、『LUXE City Guides』というイギリスのトラベルガイドがあります。もう10年以上前に10ドルほどで購入したんですが、シンプルでスタイリッシュなデザインの表紙に、写真や地図が一切無いテキストのみというミニマルなガイドブックで、シャツの胸ポケットに入るくらいの20ページ位の蛇腹折りの冊子に、オススメのホテルやレストラン、美術館などの色々なスポットが、住所、電話番号、移動手段と2、3行の簡潔な紹介文で構成されていました。行ってもいないのに行った気になってしまう、情報過多でスポンサー広告を取りながら作られている日本の分厚いガイドブックとは対極な作りでしたね。

セレクトされているスポットもオシャレでユニーク、王道とマニアックさのバランスもまた絶妙で、その旅先に詳しい友達に教えてもらったお気に入りリストのような雰囲気になっていました。アイツがオススメしてるしとりあえず行ってみるかという気分になるので、実際行った時に驚きがあったり、ちょっとイメージと違ったとしてもそんなにガッカリもしない、そんなノリと信頼感がこのガイドブックにはありましたね。

自分自身で探し出す時間と労力を削ぎ落としてくれて、その上セレクトされたものが間違いないという信頼感もある。膨大な情報の中から厳選した情報だけを簡潔に届ける一つの理想形だなと思いましたね。ボクは大量の情報にアクセスできることよりも、このような厳選された情報に高い価値を感じますね。



#5.情報から影響を受けないことの価値

自分がグッとこないモノやどうでも良い情報に囲まれて生活していると、自分が生み出すモノまで何でもないものになってしまうので、質の高い情報を得るために受信感度を高めたり、自分の信頼できる人や情報源を見つけておくことも重要ですが、影響を受けることで独自の視点や考えを持つことができなくなるので注意しています。

ボクは何かを決めたり新しいことを始める時に、人にアドバイスを求めるということをほとんどしません。人の意見に流されてやめてしまったり、上手くいかなかった時に後悔するので、たとえ同じ結論になったとしても自分の頭でしっかり考えて決断するようにしています。人の意見や情報から影響を受けないということもまた価値だと思いますね。

マイクロソフト創業者のビル・ゲイツには「Think Week」という長年の習慣があり、自然の中にある別荘に1週間こもって物事についてじっくり考えるということを年に数回必ず実行しているそうで、この間は社員や友人、家族も連絡を取ることができないそうです。自らを「圏外」に置き、全てから遮断された状態を作りだして、たくさんの本を読んでアイデアを考えたり、気持ちをリセットして、自分自身と向き合っているそうで、マイクロソフトで生まれた重要なイノベーションはここで生まれたアイデアがベースになったそうです。昨年公開されたNetflixの『天才の頭の中: ビル・ゲイツを解読する』でもその様子が描かれていました。

人の意見や過度な情報摂取は、物事についてじっくり考えたり、大事な決断をする時にはノイズにしかなりません。ビル・ゲイツのように年に数回「圏外」で1週間生活するのはなかなかハードルが高いですが、月に1日であれば誰でも実行できると思います。簡単に誰かと繋がれる現代社会では、何かを生み出すために孤独になって自分と向き合う時間と、他者と繋がる時間を日常の中でバランス良く行き来することが重要だと思いますね。




良い情報を手にするには、時代に合わせて自分の生活を変化させていく必要がありますが、生活を変える簡単な方法は住む場所を変えることです。同じ場所に住み続けているとモノがどんどん溜まっていくのと同様に、情報も溢れて整理ができなくなって溺れてしまいます。だからボクは定期的に住む場所を変えてモノも情報もリセットするようにしています。人は環境が変われば行動が変わります。知らない人に囲まれた知らない土地に身を移せば情報源がリセットされるので、情報感度が高まって新しい情報と繋がりやすくなります。

海外移住や地方移住とまでいかなくても、近くに引っ越すだけで確実に変わってきますよ。ただ、空間が広いと溜まるモノが多くなるので広い家はやめた方が良いですね。今はコンパクトな家と必要最低限のモノだけで快適で豊かに暮らすことができる時代です。変化のスピードがますます加速し、今回のコロナショックのようなブラックスワンがいつ起こるかわからない混迷の時代を個人がサバイブするためには、身軽に動けることが重要です。今は10年に一度の転換期だと思うので、当面は人々が動けない時代になったことを受け入れて、誰もがスピード感を持ってライフスタイルと価値観を変化させ、新しい生き方を模索する必要があると思いますね。


INSTはモノやニュースをコンパクトに紹介することを心がけていますが、時々このような長めのポストをコラムとして紹介しています。今までのアーカイブは、カテゴリーメニューの「Column」から表示することができますので、是非チェックしてみてください。


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May 15, 2020 | Categories » Column, Life, Technology, Travel | Tags » , , , , , , ,




 
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